「人生相談」の回答者を複数に ~相談者の選択幅を広げて~ 私のエッセイ雑記帳(その77)

ライフワーク研究家 中村 義

ある新聞の「人生相談」は、ほとんど欠かさずに拝見している。多くのさまざまな年齢層の男女の、悩み、苦しみ、教えを乞う、疑問・質問などを読ませてもらっている。

それらに対して、専門家、知識人などが的確な回答をされているのであるが、ただ気になるのは、そのひとりの意見や考えによって、相談者のその後の方向性を決めてしまうことの危険性はないのだろうかということである。

というのは、こうした紙面による相談は、面と向かって話をし、双方向でやり取りをしながら、適切なアドバイスをするのと異なるため、ときには正直なところ「本当にそのようなことでいいのだろうか?」と感じることに出くわすからだ。

それを回避するには、少なくとも3人くらいの回答者からの違った意見を併記して掲載することにしたらどうだろうか。この場合、回答者の本名は伏せてA氏、B氏、C氏などとすれば、読み手と書き手の双方にとって支障がないのではと思う。

こうすることで、相談者がそれらの回答内容を比較して、自分自身で選択することができ、より望ましいかたちになるのではないだろうか。かなり難しいかもしれないが、このような複数回答を採用することも、今後の検討課題として欲しいと切に思うのである。新しいかたちの人生相談の誕生を期待したい。

例えば、こんな相談を取り上げて具体的な提案例のひとつとしてみることに。

最近のある新聞の人生相談で「暇な時に何をすればいいのか」という30代の既婚男性からの相談記事が気になった。休日には掃除、洗濯、ジョギングなどをしているが、他に読書や映画などにも興味がなく、午前中からビールや日本酒を飲んでいる。「もっと休日の時間を有効に使いたいと思っているが、何をすればよいかわからない」といった悩みである。

これに対して、ある作家が回答したのが「何をしたいか、自分で探してみたらどうか。探すのも暇つぶしでしょう。しらふの時、じっくりと自分に一体何をしたらよいのか、聞いてみるといい。自問自答して自分に向き合ったら」といったような回答である。

まことに申し訳ないが、これは残念ながら適確な回答になっているとは思えない。もし、私がコメントする立場ならば、
「子供の頃から学生時代を含めて、これまでの人生生活の中で、好きだったこと、やりたいと思っていたこと、途中でやめたが気になること、友達から君はあれが得意だったよねとか言われていたこと、などを書き出してみなさい。

そして、じっくりと眺めてみてください。そうすると、ああやっぱりこんなことがやりたかったのかというヒントに出合います。そう、それが自分で見つけたあなたのテーマなのです。さあ、さっそく始めてみませんか。きっとうまくいきますよ。なぜなら、それは人から言われたことではなく、自分で納得して見つけたことですから。頑張ってください」といったような回答をしたい。

要するに、相談者にしっかりと向き合って、本人自身ができるだけ納得できるような具体的なアドバイスをしてあげることが大切だ。

皆さんからのコメントをお待ちしています。

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